【教育こそ要の自衛隊にあって、なぜ私財管理の教育はなされないのか?】

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第1話 【教育こそ要の自衛隊にあって、なぜ私財管理の教育はなされないのか?】


最大の理由は「必要ないから!」これに尽きる!


自衛隊の各種行動は言わずとも知れているが「我が国の平和と独立を守ること。」が根本使命であって、他国あるいは我が国に脅威をもたらす勢力からの直接・間接侵略から国そのものを防衛することである。
そんな有事(戦時)の際、隊員個人が生命や財産に執着心をもっていたのでは到底その使命を全うすることはおぼつかない。
直面する「今そこにある危機」に全身全霊をもって取り組める強健な体と、より困難な局面に一致団結して立ち向かう規律心こそが最重視される。
よって自衛隊が実施する各種「教育」はこの根本原則に基づいてプログラムされているといって良いだろう。
近年の我が国は「災害大国」といっても決して過言ではなくなってしまった感がある。
そして、国家の一大事には必ずそこには自衛官の姿があることはもはや「当たり前」の景色となった。
それらの災害派遣に参加する自衛隊員たちは長期にわたって被災地で活動するのだが、中には希望して更に長期の復旧支援活動に身を置くものも少なくはない。
そんな地域の人や国民に頼られる自衛隊員だが、実は自身も被災者であることも実際には多いのだ。
自衛隊員も職を離れれば一個人であり、父であり母でもある。
日本国民の一人として幸福の追求は基本的原則であることに変わりはないのだ。
 帰宅して変わり果てた我が家を横目に、次の復興支援に向かう準備をする。
その心意気に敬意を払うだけで十分なはずがない。
ある時、後輩でもあった被災隊員が言った
「不動産屋はハイエナだ!」
の言葉が今でも心に残っている…
その彼は、数年前にようやく建てたマイホームで数千万円のローンがいまだに残ってる状態での被災だった。
住宅は傾き、基礎は割れていたが「全壊」は免れた…
しかし、往々にして保険は全壊でない限り建て替えに必要な金額は出ない。
取りあえず相談した不動産屋に「うちは買取専門なので〇〇〇万円でしたら買い取ります。」と言われ、そのほかにはなんの提案も提示もなったそうだった。
当時まだ現役自衛官だった私は、怒りとも悲哀とも、なんとも云えない切なさを感じたものだが…


不動産屋になった今、思うのは…
恐らくはその時の業者さんも、正直な金額を提示したのだろう。
しかしながら、当時の顧客心理を考慮しての接し方や他の選択肢も提示して然るべきだったのではないだろうか?
今となっては、憶測の域を出ないが当該業者さんは接し方が悪かっただけで、良心的に金額を提示したものと信じたい。
(基本的に不動産屋は、聞かれたこと以外には答えられません。)
だが、それよりもまず私が違和感を覚えたのは、そもそもこういった事態の自衛隊員に対する組織だった救済の方法がこれまで全く考慮されていないということだ。
不動産のみならず自衛隊内で「教育」してくれる財産管理は「貯金しなさい!」程度の内容でしかない。
せめて、生涯最大の買い物であり終の棲家となる不動産の取得に関する基礎的な内容教育(地域特性を考慮した立地、躯体構造、耐震強度、税務及び資金運用)は自己責任として放任するのではなく、ある程度責任を組織負担と考え実践すべきではないだろうか? との思いに至った。(弱い立地に安い家ではなく)
靴の磨き方から、アイロンプレスの仕方、果ては歩き方まで教えてくれる自衛隊という組織の中で、子育てと家造りは科目に入っていないのだ。
家を建てよう! 
そう決心してから得る知識は、たいていの場合、間取りや立地、住宅オプションや外壁の色、床板の材質や質感等…目に見える部分の「空想の域」をベースにした勉強になる。

故に選択肢そのものの視点が大きくずれることになる。
判りやすく一例を挙げると…
「買えるところを買う」のでなく「買える様になってから買う」が正しく、
「いくらまでなら借り入れできる」ではなく「いくらまでなら無理なく返せる」
が正しいのである。
概ね、先に住宅取得した先輩たちの「美談」や「予想」にはなんら根拠がない。
しかし、実際に生涯に渡って重くのしかかってくるのは子供の教育や家族の趣味などのライフワークや、所得割合に対する税金や各種ローン等ファイナンスの目に見えない現実の部分なのである。
 これから家を持つ隊員諸兄には、しっかりとした情報を得て貰い、其のうえで自分自身の現況を加味して「熟慮」「選択」「決心」「実行」の判断をしていただきたいと思う。

現状、残念ながら誰もその為の「教育」をしてくれるものなど存在せず、自らできてこその自己責任なのだから…

 

 

 

株式会社陸自不動産代表取締役 小松野美貴哉