2024/04/10
定年自衛官の民泊経営は…〇〇だ!
本コラムは「情報缶飯Vo11.定年自衛官の民泊経営は〇〇だ!」を再編したものです。
弊社、陸自不動産は「住宅宿泊管理業」業者登録を令和2年に取得している大村市では数少ない民泊管理業者としての側面を持つ不動産会社です。
最近、定年退官を目前に控えた自衛官の方々から民泊経営についてのお問い合わせが増えてきました。
「退官後は民泊でもやって、のんびり暮らそうと思っています…」
「沖縄に民泊物件を持って運用したいんですが…」
「北海道ニセコに物件を借りて冬の間だけ民泊経営したいのですが…」…等々…
なるほど…第2の人生に夢を見るのは自由ですが、「民泊経営」も「経営」であることをお忘れなく!
物件を持って民泊サイトにUPしさえすれば、お客さんが押し寄せてくる。なんてことは絶対にありません。
しっかりとした経営戦略、最低でも年間の損益分岐点を見極めること。つまりは事業計画が必須であることは言うまでもありませんね。
民泊の場合申請だけで始められますが、180日ルールがあります。
つまり、半年間しか運用できないということです。
残りの半年間をその物件でどうやって「利益を確保」して行くのかが重要な要素になります。
また簡易宿所の場合、物件の所在する所の「旅館業法担当窓口(主に役所建築課)」「保健所」「消防機関」から今度は許可を得なければいけません。
さらに、簡易宿泊所使用部分の合計面積が200㎡(60.5坪)以上の場合、「確認申請」をした上で建物の「用途変更」が必要となります。
これは相当ハードルが高くなります。
「申請」と「許可」の大きな違いです。
弊社は立地柄、長崎県の隊員さんからのお問い合わせが多いのですが、大半の方が「田舎の一軒家を買って民泊を始める。」といった趣旨でお話をされます。
そこで…
「お客様(宿泊客)があなたの宿泊所を選ぶ理由はなんですか?」
とお尋ねするのですが、殆ど破天荒な回答が返ってきます。(やぶれかぶれ隊長)
要約するとこんな感じです…
「田舎暮らしを体験してもらおうと思って…」
「今、ホテルが足りていないから、必ずお客は来るはずだ。」
「○○市内から、そんなに離れていないから大丈夫でしょう…」
「現地には土地勘があるから…」
「外国人観光客が宿泊してくれるはず…」
「ウチの実家が空いてるから民泊でもしょうと思って…」
どれも、自身でエビデンスを確認されていません。
・わざわざ田舎に泊まりたくなる「何か」はありますか?
・近傍の(長崎県)のホテルはどれくらい不足していますか?(むしろより以前より高額になって各社満室状態では?)
・現地の家賃相場を御存じですか?それでも利益が得られますか?
・街から離れているところを一般に「不便な所」といいます!
・インバウンドに対応した装備や施設を準備できますか?
とうてい本気で「事業」として捉えているとは思えません。
確かに「民泊」の黎明期「エアビ―」などと呼ばれていた民泊新法ができる以前の無法地帯だったころは、珍しさもあって儲かりました。
実は私も現役時代に、黎明期には保有していた福岡市内のアパートを1棟売却し、浅草と御徒町に民泊物件を賃貸で保有したことがあります。
当時の代行業者はボッタくりもいい処で「月額売り上げの30%」を手数料として持っていかれていました。
その変わり丸投げできていたので、それなりに利益は出ていましたが、民泊新法の施行と併せて民泊適正管理主任者という民間認定資格を取得した後、全て売却しました。
当時の売上利率は、概ね「家賃35%」「代行業者委託料30%」「清掃・リネン代等5%」「利益30%」といった感じでした。
(フルで代行依頼した場合は、恐らく現在もそう大きく変わらない利率ではないかと思います。)
その時のエピソードを一つ…
浅草の賃貸物件は立地も良く、かなり利回りが良かったのですが(料金を低く抑えて人数を入れる方法を取っていました。)しかし、あまり低料金にすると中にはとんでもない宿泊客もいます。
宿泊客が警察沙汰を起こして大家さんから契約解除を言い渡されてしまいました。
御徒町物件はその後数年間保有しましたが、結局アパートや戸建投資の方が利回りが良く安定していると考え、揃えた家具・家電、WEBページ等資産ごと次のオーナーに売却しました。
では、これから民泊を本気で始めるにはどうしたらよいのでしょうか?
民泊とは「自宅の一部や全部に、他人を宿泊させ、その対価としてお金をもらうこと」をいいます。
2018年6月に民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行され、民泊をおこなうには、行政に対して届け出をする必要があります。
許可なく民泊をした場合は違法となり、刑事罰の対象となります。
因みに弊社をはじめ、各「住宅宿泊管理業者」等は、これらの未届・未許可物件の管理等は一切取り扱いません。
所謂「ヤミ民泊」事業所とは取引できないのです。
民泊の始め方としては、以下の3つの形態があるため、自分が目指す民泊スタイルはどれが適切かをまず決める必要があります。
1.住宅宿泊事業法(新法民泊)に基づく方法
2.旅館業法に基づく方法
3.特区民泊の認定に基づく方法
ではそれぞれに見て行きましょう。
1.住宅宿泊事業法(新法民泊)に基づく方法
こちらは2018年6月より施行されたもので、個人で行う民泊としては、もっとも取り付きやすい形態です。
ほかの2つの方法は「申請」「認定」であるのに対して、新法民泊は実質的な審査がなく、すぐに営業を始めやすいことが特徴です。
※メリット
・申請は「届出」、形式的に受理されれば〇
・設備はキッチン、トイレ、お風呂、洗面台の4点セットがあれば〇
この基本4点セットがあれば届け出ができるため、基本的に住宅であれば新古・綺麗・汚いはあまり問題ありません。
・用途変更の手続きや工事が不要
この民泊新法で民泊の届け出をした場合、とくに用途変更や用途の基準に見合った工事等は必要ありません。
※デメリット
・年間営業可能日数に制限がある。(新法民泊の場合、年間180日までの営業となるため、年間収益を考慮する必要があります。)
・住宅宿泊管理業者への委託が必要
家主が同居や常駐しない場合では、国土交通省に登録した住宅宿泊管理業者へ委託し、その部屋に管理業務をしてもらう必要があります。
以下に国土交通省が配布している資料を添付しておきます。
住宅宿泊事業(民泊)を始める人へ
2.旅館業法
基本的には、ホテルや旅館などの宿泊施設を想定しているものですが、2018年6月の法改正で小規模の宿泊施設でも使いやすいよう緩和されました。
※メリット
・年間365日営業できる。
※デメリット
・そもそも、旅館業法の許可がとれないエリアがある(都市計画法上の用途地域や建築基準法、自治体の条例の問題等)
・フロントやスタッフ常駐が必要
・用途変更が必要であり、それにともない工事が必要となる場合も
以下に参考となるWEBサイトのURLを添付しておきます。
3.特区民泊の認定
特区民泊とは、外国人旅行客を対象にしたものであれば旅館業法の適用が除外されるという制度です。
東京都大田区や大阪府大阪市など、一部の地域の条例で認められているものです。
※メリット
・フロントや管理人常駐の義務はない
・用途変更の手続きや、工事が不要
※デメリット
・そもそも特区民泊が認定されている地域が非常に限られている
・一回につき二泊以上など、滞在日数の制限がある
国家戦略特別区の一部でのみ認められている外国人を対象とした民泊事業です。
旅館業民泊同様、365日営業することが可能ですが、手続きが煩雑で時間がかかることと「2泊3日以上滞在する宿泊客しか受け入れることができない。」という特徴があります。
自治体ごとに決められた窓口で認定のための申請を行い、消防署や保健所の指導を受けて整備を行う必要があります。
書類提出や手続きには、民泊事業の運営が個人と法人で異なる点があるため、注意が必要です。消防関係の手続きには時間がかかるため、余裕を持って計画を進めることが望ましいでしょう。
行政が認める地域で営業ができる為、特区民泊が最もハードルが高いといえるかもしれませんね。
それでは、定年退職する自衛官にとって最も現実的な選択肢はどれでしょうか?
☆住宅宿泊事業者になる。
「住宅宿泊事業者」とは、「届出をして住宅宿泊事業を営む者」と定義されています。つまり「対象物件で民泊事業をおこなう人」が住宅宿泊事業者になります。
自身が届出住宅に住みながら民泊事業を行う場合は、住宅宿泊事業者兼住宅宿泊管理業者となります。
住宅宿泊事業には「家主居住型」と「家主不在型」の2つの選択肢があります。
家主居住型とは、届出住宅に住宅宿泊事業者が居住して不在とならない民泊(自宅の2階を使用する。・自宅の離れを利用する等)で、この場合は自身で管理することができます。
逆に言いますと、不在となる届出住宅の場合は「家主不在型」となり、「住宅宿泊管理業者」に住宅の管理委託しなければいけません。(外注するということ。)
「不在」とは?
一概に定めることは適当ではないとされているものの、原則1時間とされています。
諸々の事情を想定しても2時間程度の範囲とされています。
つまり、2時間以上対象の家を空けるようなことがある場合、家主不在型とされます。
その他、細かな諸規定が法令で明確に示されています。
🌸⚓まとめ⚓🌸
定年自衛官が民泊経営を企図する場合、まず何よりも「勉強」が必要です。
最低限、民泊新法は熟知している必要があります。
取りつきやすい反面、法令は結構複雑です。
住宅宿泊事業法(新法民泊)に基づく方法で開業する。
・まずは立地!、とにかく立地!
・自身で物件を保有し「住宅宿泊事業者」・住宅宿泊管理業者」として登録して住宅宿泊事業者兼住宅宿泊管理業者となる。
・現に民泊運営中の物件を丸ごと購入する。
・好条件、好立地に住宅を購入して、民泊希望者に賃貸する。(自身は家主として家賃収益を得る。)
・2世帯住宅(分離型)を購入し、A棟、B棟それぞれ個別の施設として180日ずつ運営する。(360日収益化)
・事業計画書を作成し損益分岐点を明確にする。
・対象顧客を決定する。
・お客を呼べるキラーコンテンツを持つ(作り出す)こと
(田舎でも「いちご狩りができる」や「地元の漁師さんや農家さんとタイアップする。」「陶芸やハンドメイド作品造りができる。」などの、ここでしかできない体験や経験をコンテンツ化する。)
最後に…
今回は、定年後の民泊開業について簡単にお話させて頂きました
注意して頂きたいのは、「民泊管理業」と「宅地建物取引業」は全くの別物だということです。
基本的に不動産屋に行って「民泊相談」をしても、それは見当違いです。
ただ、今回取り上げた大きな理由は、「民泊物件」を不動産投資と位置付けて販売斡旋する業者と隊員さんの絡みがあったからです。
もし、民泊物件を購入する際はその対象物件の所有権も同時についてくるのか?
あるいは、民泊は賃貸物件で、その賃借権と民泊の運営権だけを買うのか?で大きく変わってきます。
不動産投資として民泊物件を斡旋するような業者があなたに接触してきた場合、その物件の所有権はどうなるのか?民泊運営はどうなるのか?
そして、その業者は確かな業者なのか?
を自分で情報収集し、法令と照らし合わせて自己判断する必要があります。
弊社では、民泊相談は宅建業とは完全に切り離して行っています。
基本的に民泊経営では事業計画の無い方の御相談には対応しておりません。
それでは次回をお楽しみに…
株式会社陸自不動産
代表取締役 小松野 美貴哉